タイトル | ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ |
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原作・作画 | 虚淵玄(ニトロプラス)・広江礼威 |
出版社 | 小学館/文芸 (ガガガ文庫) |
悪徳の街──ロアナプラにて起こる奇妙な事件の数々。
ホテル・モスクワ内部の権力闘争とバラライカの遠き過去である、アフガンに一人取り残された古参兵「悪魔の風(シェイターネ・バーディ)」と呼ばれていた、スタニスラフ・カンディンスキーの彷徨の結末と、殺人ブログ「デッドリー・ビズ」を人生の生業にする、アルティメット・クール・Jとラグーン商会の激突の行方を、あの虚淵玄先生が描く物語。
ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディのあらすじ紹介
それは簡単に仕事だったと、ラグーン商会の面々はそう思っていた。
悪党達の一日の稼ぎを手伝えばいい。
報酬をもらい、もし相手が下手をうてば、その場から逃げればいい。
そんなごくごくありふれた、小悪党の海賊の手伝いだった筈が、蓋を開けてみれば、それが厄介事の糞だった事を思い知らされてしまう。
自称「海賊卿ヘンリー」の子孫を名乗り、永遠のハロインナイト気取りの女海賊衣装に身にまとう、グラマーな女性──キャロライン・モーガンが、配下のトルチュ団の手下を幾人も引き連れ、自前の海賊船ではなく、オンボロな魚雷艇で海賊をしようなどと、あまりにも馬鹿げた依頼。
自前の海賊船はどうしたんだと、コスプレパーティーの面々に皮肉を言いたいレヴィ。
不機嫌な彼女に頭を悩ますロック。
そんな珍奇で奇天烈なコスプレ海賊団の中で、唯一にまともに見える二人の男も、結局は厄災の種でしかなかった。
南の海に似合わない、ニューヨーカー気取りの軽薄なヒップホップファッションを着こなし、自身を最高の存在と疑わないジェイク。
そして重度のヘロイン中毒を患う、今すぐにでも棺桶が必要な死相を浮かせ、今を見ずに遠くどこかを見据え彷徨うスタンなど、先行きの不安な海賊依頼は、やがてロアナプラで最悪凶悪なホテル・モスクワと三合会の再度の抗争勃発につながる引き金となってしまう。
無実を証明する為に動く事となるラグーン商会の面々。
そして、この事件がバラライカの率いる遊撃隊の過去へと繋がる、導を見失った一人の男の結末へと導く物語であることを、誰も知らない……
知るのは、風だけだった。
ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディのネタバレ・今後の展開
ブラックラグーンのライトノベル作品。
それを手掛けるのは、あの虚淵玄先生。
広江礼威先生の世界観に虚淵玄先生の持ち味がミックスされる今作。
その物語の始まりは、ラグーン商会が引き受けた仕事が全ての始まりでもありました。
あまりにも時代遅れなカリビアンな海賊衣装に身を包み、カリビアンな海賊の手下を引き連れるキャロライン・モーガンの依頼を引き受けたラグーン商会は、目的地までに彼女達を運びます。
でもその道中は不安一色な状況でしかなく、レヴィも不満たらたらと不機嫌モード。
それもその筈。
レヴィが最も嫌う、軽いノリのアメリカンなヒップホップファッションのジェイクに絡まれ、いつ銃を抜くか解らないそんな状況下で、唯一にまともそうに見えていても、実は重度のヘロイン中毒者だった、底知れぬ雰囲気を持つスタンなど、クセの強すぎる面々に、ロックは気をすり減らしていきますが、目的地である船へとたどり着き、キャロライン・モーガンは行動を開始していきますが、その船がまさか三合会の船だったとは、彼等はある陰謀に巻き込まれてしまったのです。
そうロアナプラにおいて最大最悪の組織であるホテル・モスクワ内部において抗争を画策する勢力が、バラライカの失脚を狙っていたのです。
三合会の船に海賊行為を行った、メンバーの中にいた、ヘロイン中毒の男スタン。
彼はかつてアフガンで「悪魔の風(シェイターネ・バーディ)」と呼ばれた、遊撃隊……バラライカの部下だったのです。
組織に身の潔白を証明する事になった彼女。
はたして元部下に下す決断とは?
ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディの読んでみた感想・評価
広江礼威先生の漫画における、独特のセリフ回しと物語の展開が見どころとなる漫画作品「ブラックラグーン」を、あのニトロプラスの虚淵玄先生が手掛けていることに、大きな見所があります。
虚淵玄先生は「代表作に「魔法少女まどか☆マギカ」など「PSYCHO-PASS サイコパス」などの、他作品の追従をみせない、個性色の強い世界観を描く、残酷で、微かな希望の救いしかなく、それでもなおも歩む、主人公や登場人物のキャラクター像の創作に定評のある作家でもある虚淵玄先生が、悪徳の街ロアナプラを舞台に、それぞれの結末を迎える、悪党達のそれぞれも物語を描いていることに、今作の最大の見せ場があります。
かつて戦場の英雄であり、バラライカと共にアフガンの戦場を戦い抜いた「悪魔の風(シェイターネ・バーディ)」ことスタン。
彼が戦場に取り残され、麻薬による中毒で、帰るべき場所を見失い、彷徨い続けていた彼が、ある作意によって、バラライカの前に現れた事が、この物語の大きな展開とも言えます。
戦場にあったであろう、かつての絆。
見えていた導を見失い、ようやくに見つけたスタンが、自分だけが取り残され、世界は、部隊は変わっていたと、かつて焦がれていたバラライカに語るシーン等、その文体は、悲しくも救いのある文面で構成され、スタンの彷徨が終幕へと向かう結末へと導く展開が、虚淵玄先生のテイストだけではなく、広江礼威先生の「ブラックラグーン」の一部であると、その独特の個性の両方がミックスされ、どちらの個性に固むことなくに、より上質に仕上がったライトノベル作品とも言えます。
ハードボイルドなガン・アクションが好きな方におすすめ!
ブラックラグーンを愛すべき読者が、納得のできるライトノベル作品を、あの虚淵玄先生が手掛け、ハードボイルドのブラックラグーンへと導いた今作。
儚く見失う男の導と、その結末を切に描く、時間と共に立ち消えてしまう戦場の記憶をたどる、一人の兵士の顛末が心を打つ作品に仕上がっています。