タイトル | 人類は衰退しました |
---|---|
原作・作画 | 田中ロミオ・戸部淑 |
出版社 | 小学館/文芸 |
かつて地球に繁栄していた人類は物質文明の限界を迎えてしまい、そのまま緩やかな衰退へと進んでいた時代。
地球には新たなる人類である「妖精さん」と呼ばれる新種族達が広がるも、ゆらゆらとその日を生き、高い知能と技術を持つも、それを楽しい事にしか使わないと、世界は大した変化を見せないまま、人類と妖精さん達は穏やかな時間を重ねていた。
これはそんな「妖精さん」と人類の間を取り持つ、調停官の「わたし」の緩やかな衰退の日々を描いた物語である。
人類は衰退しましたのあらすじ紹介
牧歌的な風景が広がる平原を走る一台のトレーラーは、雑草や根っこなどを踏み潰し、ガタゴトと進んでいました。
そのトレーラーの荷台に乗る「わたし」は、自分が乗るトレーラーが走る道には、かつて舗装された道路があり、もしまだ道路が残っていれば、もっとスムーズに走り進んでいたのだろうと憂鬱を患っています。
人類がある日を切っ掛けに衰退への日々を送る事となった世界は、かつての物質文明の象徴たる人類の文明が緩やかに失われていき、自然の溢れる世界へと戻ろうとしていました。
人類も日々少なくなり、自分が通う学舎も閉校となり、人類は終焉を迎えようとしていた種でもありました。
人類最後の教育機関の卒業生となった「わたし」は、久しぶりに生まれ故郷であるクスノキの里へと戻ろうとしていたのです。
そんな時、偶然に雑木林の中から見つけてしまったのは、新しい人類である「妖精さん」の姿でした。
旧人類の人間にとって代わり、新人類となった、その「妖精さん」との間を取り持つことを仕事とする国連調停理事会の調停官となった国際公務員となった「わたし」は、妖精さんが巻き起こす楽しい事を調整する為に頑張っていきます。
人類は衰退しましたのネタバレ・今後の展開
かつて地球へと向かう隕石群の全てを核ミサイルで撃ち落とし、宇宙へと打ち上げた人工衛星からマイクロウェーブによる照射で太陽からの熱電気を地上の全てに供給するなど、超科学を持っていた人類。
宇宙へと進出し、巨大な地下シェルター都市を建造し、高度文明レベルを築いていた人類こと人間達は、文明の絶頂へと達していました。
でもある日を境にして人類は衰退し、かつての超文明は失われていき、文明はいつしか中世までに落ち込み、緩やかな衰退とともに人類は終末を迎えようとしていました。
そんな滅びゆく人間にとって代わって世界に繁栄しようとする「妖精さん」達。
人間よりも優れた能力と技術を持ち、一夜にして人類以上の文明を築けるなどの能力を持つ新人類が、世界の新しい人類として繁栄しようとしていました。
でも「妖精さん」世界をどうすることなく、楽しい事だけに全てを注ぎこむ事を目的としているが為に、「妖精さん」の存在すらも知らない人類などいるぐらいに、衰退する世界は緩やかで穏やかな日々を向かえてしました。
そんな妖精と人間との間に生じる問題を解決する事を仕事とする国連調停理事会の調停官となった「わたし」は、数年ぶりにクスノキの里へと戻ってきました。
そんな中で妖精さん達を事務所へと連れ帰ってしまった「わたし」は、見た目が同じために区別しようと、妖精さん達に名前を付けてしまいますが、それがとんでもない事態を引き起こしてしまい、ついには「わたし」を神様にしてしまう事態へと発展してしまいます。
はたして妖精さんが引き起こしてしまう問題を解決する事ができるのでしょうか?
人類は衰退しましたの読んでみた感想・評価
美少女ゲームのシナリオライターを経て、小説家などで活躍する田中ロミオ先生によるライトノベル作品「人類は衰退しました」は、終末を迎えた人類を題材にしたライトノベル作品です。
田中ロミオ先生と言えば、代表作のゲームシナリオには「夏夢夜話」や「少女たちは荒野を目指す」などがあり、世界を取り巻く人間の価値観の演出に定評のある作品です。
世間に周囲などと、人間が生きていく中で、コミュニティを形成する人々と、あえて距離をとり、またはそうせざる得ない事情を抱えている等、孤独を受け入れる事を望み、遠くから大切な人を見守り守る作風。
そしてそれに独特な表現を交えたコメディタッチのファンタジーとSFなどを取り入れ、コミカルにシリアルに描き、暖かく穏やかな文体で綴る物語に定評のある作者さんです。
「Rewrite」などの恋愛アドベンチャーゲームや、アニメ化に至る構成・脚本協力などを手掛け、身近な世界を大きなものへと変え、世界を広くみせる手法など。
田中ロミオ先生による演出は、個人が取り巻く当たり前の日常の中に不思議を投入する事により、変化し、それを紐解き謎を解いていくなどの冒険をテーマに描かれています。
この「人類は衰退しました」は、終わり行く人類と、新しい人類へと移り変わるなど、一見すればディストピアな終末世界にも関わらず、緩やかな日々を送る人類と新たなる種である「妖精さん」との日常。
本来なら絶望に満ちている筈の終末の時代にも関わらず、衰退をあっさりと受け入れ、妖精さんを受け入れているのんびりとしながら、変わらない日常を送ると。
どことなくにブラックなユーモアなどを織り交ぜ、牧歌的な物語に独特な面白さを演出した今作は、そんな終末へと向かう中で見せていく人間性を散りばめた作品とも言えます。
メルヘンとファンタジーの融合したライトノベル作品
緩やかで穏やかな文体の小説を楽しみたい方や、バトルや恋愛とは違う、終末世界と衰退した人類の最後の物語を楽しみたい方におススメしたい作品が、今回紹介する「人類は衰退しました」です。
文字通りに種として衰退の一途を辿り、新人類である「妖精さん」が人類よりも増え始めていると、実に終末世界な様子をユーモラスかつに描き、妖精さんを交えながら、不思議な体験をして行くと、主人公の「わたし」を通して描かれる今作。
メルヘンとファンタジーの融合したライトノベル作品であり、ブラックユーモアとSFの要素などを交え、幅の広い面白さを持つ作品とも言えます。
この作品を手掛けるのは、あのシナリオライターとして幅の広い活躍をする田中ロミオ先生で、美少女ゲームなどで幾つもの作品を手掛け、またアニメ作品のシナリオなど、様々な要素のある作品を手掛ける事で有名な作者さんです。
主人公の「わたし」を通して描かれていく、衰退した人類と繁栄する妖精さんの物語。
楽しい事があれば何でも出来てしまうと、テンションで文明を左右する妖精さんに好かれ、お菓子作りが得意な女の子として描かれていますが、時には腹黒く、内心でキツめなツッコミをしていくと、彼女の視点で描かれていく、不思議な日常と物語。
そんな終末世界の緩やかに穏やかに描かれる今作。
色々と目まぐるしい作品が多いライトノベルと漫画を読む中で、一休みをして見たい時におススメしたい作品です。