タイトル | 宇宙一の無責任男シリーズ |
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原作・作画 | 吉岡平・ |
出版社 | KADOKAWA / 富士見書房 |
人類が宇宙へと進出し、やがて地球主体とした惑星連合が形成され、惑星が一つの国家とみなされる事が当たり前になった宇宙歴を刻む時代。
だがそれは惑星連合とラアルゴン帝国の間で、いつ終わると知れない大戦が勃発する、混迷の時代でもあった。
そんな策略と調略が双方に渦巻く混沌とした戦乱の時代に、おべんちゃらと強運だけで渡り歩く、お気楽にして極楽かつ奔放とした性格の男──ジャスティ・ウエキ・タイラーが、動乱の宇宙時代を駆け抜けていく!
不真面目にして無責任が彼の最大の武器。
後の大英雄として宇宙の歴史に名を遺す、無責任男の銀河英雄叙事詩──宇宙戦争なんて真面目にやるのは馬鹿を見る! 世の中楽しんだ者が勝つ!
宇宙一の無責任男シリーズのあらすじ紹介
かつて人々が空想と夢想の中で想い馳せていた宇宙への進出が当たり前となり、幾度の発展と衰退、紛争と大戦を迎え、破壊と再生を繰り返しながら、宇宙歴を7000年と築いていた、遥か遠い未来の時代。
宇宙空間を航行する宇宙巡洋艦NCC-3737艦名「阿蘇」の副官を勤める惑星連合宇宙軍中佐を勤めるマコト・ヤマモトは、自分の理不尽な人生を呪っていた。
異例の速さで出世し、軍閥の家系に恥じる事無くに、人生の駒を進めていた筈のヤマモトは、何故に自分は、あの男の下で働かなければいけないのかと思い悩んでいた。
ヤマモトの上官でもあり、この艦艇において自分の次に権限を持つ、ジャスティ・ウエキ・タイラーの存在を認める事ができないでいた。
自分とは違い、エリートでないにも関わらず、異例の速さで出世し、艦長へと昇りつめてしまった彼の事を認められないヤマモト。
そんな中で偶発的に発生してしまったラアルゴン帝国宇宙艦隊との遭遇してしまう──
宇宙一の無責任男シリーズのネタバレ・今後の展開
辺境宇宙域にも関わらず、敵と遭遇してしまった「信濃」は、惑星連合に敵対するラアルゴン帝国の艦隊との戦闘に突入してしまいますが、数で圧倒的に勝っている相手に勝つ術はないと、ヤマモトは既に自身のもとに訪れ来るであろう死を覚悟してしまいます。
ですが、艦長であるジャスティ・ウエキ・タイラーは、そんな絶望的な状況を悲観するどころか、毎度ながらにお気楽にしながら、相手との戦闘に望みます。
一隻で味方の援護どころから、救助も期待できないと、最悪な状況の中で、何も考えていないタイラーに、もしや秘策があるのかと思いますが、タイラーには、そんな戦略家みたく奇抜な発想はなく、とりあえずワープで逃げろと命令を出してしまいます。
敵を目の前にして逃げろなんてと命令する艦長に、流石のヤマモトも複雑な心境を抱いてしまいます。
由緒正しき軍人の名門の出であり、エリートと自身を自負するプライドの高い彼が、敵を目の前にして逃げるなどと流石に容認できませんが、討ち死にするよりもましだとタイラーに命令を強行させられてしまい、ワープする事になっていまいます。
ワープ航法なら逃げだす事ができるかもと思いきや、急場の為に座標を安定させていなかったゆえに、元の位置から少しずれたぐらいにしかワープしていなかったと、なんともお粗末な結果になってしまいます。
こんな最後なのかと、悲壮感をさらに強めてしまうヤマモト。
敵の戦艦のレーザー砲門が「阿蘇」へと向けられ、一斉砲撃を受ける事になりますが、ワープをしてしまった事で、宇宙空間が歪んでしまい、敵の砲撃したレーザーが歪んでしまい、取り囲む敵艦隊を同士討ちしてしまうと言う事態になってしまい、見事逆転勝利してしまったタイラーと阿蘇の面々達。
後の大英雄の初勝利となり、ヤマモトの苦難の始まりとなる初陣はこうして幕を閉じますが、それは軍上層部の嫉妬を買う事になってしまいます。
宇宙一の無責任男シリーズの読んでみた感想・評価
今回紹介するライトノベル作品「宇宙一の無責任男シリーズ 無責任艦長タイラー」は、吉岡平先生の代表作でもあります。
1989年に発表されたスペースオペラタイプのSFライトノベル作品である今作。
スペースオペラの主人公にも関わらず、お堅いイメージがまるでなく、英雄伝に出てくる様な熱い意志もなく、トントン拍子に出世し、ヨイショとおべんちゃらで、どこぞのサラリーマンみたくに出世すると、少し変わった風変わりなスペースオペラ。
この作品の生まれるきっかけともなったのは、この物語の作者でもある吉岡平先生が、俳優・植木等の主役を務める東宝映画の「無責任男シリーズ」の大ファンだった事から始まっています。
無責任男シリーズとは、悲壮感漂うサラリーマンの日常を、お気楽に生きて、トントン拍子に出世すると言う、主人公の平均が面白可笑しくに過ごしていく作品を下地に、もしそんな作品の主人公が、真面目なスペースオペラの主役……もとい艦長になってしまったらどうなってしまうのかと、そんな突拍子もない発想で構成されたのが、この「宇宙一の無責任男シリーズ」でした。
戦乱が渦巻き、政治的な野心と策略が跳梁し、敵味方共に油断ができない緊張感のある日々の中で、お気楽にそんな時代をマイペースに生きるタイラーが、いったん戦場に出ればすぐに勝利してしまい、誰も発想しないだろう、不可能な作戦も実現してしまうと、三枚目が二枚目と変わる内容に、艦長から大将に、はては大統領。
そして最後は宇宙の全てを牛耳る黒幕と、出世を果たしていく、そんな彼の物語が痛快でたまらないライトノベル作品です。
昭和のSFの面白さを存分に味わえる作品です
昭和のSF作品を知る世代に、昭和のSFを知ろうとする方に、そしてチートとは何ぞやと、ライトノベル作品を読む人にお勧めしたいのが、この「宇宙一の無責任男」です。
この物語の主人公のジャスティ・ウエキ・タイラーは、それまでのスペースオペラに出てきた、否、SF作品と銘を打つすべての作品の中で登場していた、宇宙戦艦の艦長のイメージを完全に崩した人物でもあり、宇宙戦艦艦長の中でも異質かつ最強とも言われているのが、このジャスティ・ウエキ・タイラーです。
なにせこの艦長は、運とその場の発想と度胸などで場を乗り切ると言った、それまでの真面目でお堅いはずのSFの艦長のイメージ層を完全に崩してしまい、後の艦長の新しい形を作りだしてしまった、そんな名艦長が主人公となる本作品。
宇宙を舞台に繰り広げられるスペースオペラの壮大感もさることながら、彼を取り巻く様々な物語など、一大叙事詩とも言って良い程に、この物語の主人公ジャスティ・ウエキ・タイラーの生涯を凝縮した、彼の歴史そのものと言ってもいいぐらいに、この物語の内容は一巻では読み足りない程に引き込まれる、作品の濃さがあるのです。
一見、SF宇宙戦争ものと言えば、当時の中でもお堅いイメージが付きまとうモノでしたが、読めば読むほどに物語に引き込まれ、SF戦記の楽しさが十分に伝わる内容と、SFの面白さを凝縮した作品でもあります。
昭和のSFとこれからのSFの同時を楽しめる内容の「宇宙一の無責任男シリーズ1 無責任艦長タイラー」は、真面目に頑張っている日々を潤してくれる内容のライトノベル作品です。