タイトル | 私は敵になりません! |
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原作・作画 | 佐槻奏多・藤未都也 |
出版社 | 主婦と生活社 |
ゲームそっくりの世界で自分がやられ役の中ボスだと気が付いたらあなたならどうしますか?ここは地球とは違う世界。
主人公の少女キアラは前世で遊んでいたTVゲームのことを思い出します。
そして世界がそのゲームそっくりであることに気づき動揺します。
なぜなら自分が将来悪役としてゲームの主人公である誰かの前に立ちふさがり討たれる運命にあることを知ったからです。
これはそんな運命の選択を突き付けられたある少女の物語。
私は敵になりません!のあらすじ紹介
魔法が存在し国家間紛争が尽きない世界。
主人公キアラは幼くして母を亡くし父からは愛されない不遇の身の上でした。
挙句の果てに伯爵家に養子に出されます。
伯爵のもと寮のある学校へ入学します。
しばらくは続く平穏な生活。
その平穏は一通の手紙により打ち砕かれます。
突然降りかかる縁談話しかも相手は評判の悪い貴族のおじさんです。
そしてある夢を思い出します。
地球で遊んでいたTVゲームの記憶。
それはこの世界には存在しないものです。
ですが今その記憶は現実のものとなりかけていました。
縁談相手と結婚すればキアラ・クレディアスとなりその名は悪役としてゲーム終盤に主人公に討たれる女魔術師のものです。
ゲーム内の国家、王家はすべてこの世界に実在します。
混乱しながらも決断を迫られます。
主人公は現状からの逃亡を選択。
早速行動を起こす主人公は数奇な運命からゲームでの主人公アランとその友人レジーと出会います。
私は敵になりません!のネタバレ・今後の展開
逃亡した主人公キアラはアランと友人レジーの計らいによりアランの実家であるエヴラール辺境伯家で働くことになります。
このときレジーの正体が明かされ、この国ファルジアの王子であり次期国王となる身であることを知ります。
王族であるレジナルド(レジー)は先王の息子であり先王の弟になる現王に疎まれて育ちます。
また隣国ルアインとの講和を目的に現王がルアイン国王の妹を王妃にすえたためか王妃一派にも狙われています。
そんな家族に疎まれる境遇をもつレジーは初めて得られた心許せる相手として主人公に優しく接します。
レジーと朴訥ながら清々しい少年アラン、そして暖かく迎えてくれた辺境伯家の人々。
束の間の平和を享受すること2年。
ゲームの冒頭でエヴラール辺境伯家は隣国ルアインの奇襲を受け城は陥落、アランの父辺境伯は戦死します。
唯一生き残ったアランは仲間を集めルアイン軍と裏切者である王妃を討伐するため挙兵、ここからゲームがスタートします。
つまり辺境伯家の人々はほぼ亡くなってしまう運命にあります。
また主人公は王子レジナルドが王妃の姦計にはまりエヴラールの地を訪れ敵の矢に倒れることを思い出しました。
そしてこの運命を覆す力が自分にはあることに気づきます。
そうゲームでは巨大ゴーレムを操りアランを散々苦しめる存在、女魔術師キアラの力は主人公に備わっているのです。
魔術を操る方法を探す主人公。
ルアイン軍の襲撃はもうすぐそこまで迫っていました。
私は敵になりません!の読んでみた感想・評価
主人公は現世で初めて暖かく接してくれたエヴラールの人々を救うため魔術師になることを誓います。
この世界の魔術師は強大な力をもっていますが反面、魔術師になれなければ死亡してしまうというリスクがあります。
身体の限界か素質なく魔術師になることはないのです。
そして素質をみることはできずほぼ一発勝負の儚い賭けなのです。
幸い主人公は適性があることは分かっています。
それでも力を使い過ぎて死亡することはありそれは身体ごと砂と化し後には亡骸も残らないという残酷なものです。
敵方の魔術師として戦うことが嫌で逃げたはずでしたが今度は大切な人を護るためその力を求める主人公。
この作品は運命の選択を繰り返し主人公に突き付けていきます。
前世の記憶により逃げることを選択し、護るために魔術師になることを選択する。
そして魔術師として敵軍の人々を殺すことを選択させられます。
運命とは選択を続けた末に決定するものなのでしょうか。
そもそも終わりなどあるのでしょうか。
魅力的な登場人物は主人公にとって大切なひとたちでしょう。
描写からも人格者であることがわかる辺境伯夫妻。
王子であるのに寂しげなレジー。
精悍で真っ直ぐなアラン。
故郷を失いルアインに復讐を誓う騎士カイン。
飄々とした悪びれない魔術の師匠ホレス老人、そして辺境伯家の人々。
皆が生きる幸せな未来を一緒にみるにはすべての選択を超えなくてはなりません。
力でも知恵でも権力でもなくその未来をみるという強固な意志がその願いを叶えるのではないでしょうか。
恋に悩み戦いに身を投じる主人公はどんな結末にたどり着くのか。
ファンタジー戦記ものが好きであれば安定の作品!
作中ゲームの話を出していますがちゃんとした王道ファンタジーです。
ファンタジー戦記ものが好きであれば安心してみることができます。
普通は作中にでてくるゲームシナリオのようにアランのような立ち位置の視点になるところですが主人公キアラは敵方の強力な魔術師としての素質をもちます。
序盤に巨大ゴーレムは難易度をぶち壊すものでしょう。
ですがこの作品では魔術の使い過ぎによる死亡リスクを取り上げ現実になった世界が厳しいものであることを描写しています。
ゴーレムは倒せずとも主人公が死亡すれば戦線は崩壊するかもしれません。
もともと救うことは叶わない人々を仲間にしていますがそれゆえの大所帯。
ゲームのアランはすべてを失ったからこそ身軽に行動でき最初の戦闘も小規模なもので済んだことでしょう。
ですが守るものが多く兵数は国家であるルアインよりは少ないです。
ゴーレムがいて局地戦に勝利できても大軍ルアインとの本格的な戦争にはさらなる仲間が必要です。
それも早急に。
最後にもう一度、この話は恋に悩める普通の少女とそれを支える仲間たちが織り成す一大戦記ものです。
ぜひご一読を。