タイトル | ザ・サード【完全版】 |
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原作・作画 | 星野亮・士郎正宗 |
出版社 | 毎日新聞出版 |
世界の全てを破壊し、命の巡る蒼き星を灰色の砂漠とさせてしまった大戦後の時代を舞台に、額に「蒼い」第三の瞳である天宙眼を持つ少女・火乃香は、枯れ果て乾いた砂漠の大地を歩んで行く。
ザ・サードと呼ばれる新種族により、文明の管理が当たり前となった混迷の時代を、一振りの刀で斬り抜けていく、ソードダンサーの異名もつ火乃香と、彼女の星へと降りたった異星人のイクスの物語の果てに何が待つのか?
ザ・サード【完全版】のあらすじ紹介
世界を滅亡へと導き、星の生命の全てを枯渇させてしまった大戦と呼ばれる災厄後の世界。
大地の全ては砂漠と化し、人類は緩やかな死滅へと歩もうとしていたが、人類から進化を果たした新種族により、大戦後の地球は微かな再生への道を歩んでいた。
ザ・サードと呼ばれる新種族。
それは人間とは違い、額に紅き光彩の瞳である天宙眼と呼ばれる第三の眼を持ち、電脳ネットワークへと任意で接続する事を可能とする種族だった。
ザ・サードは人類の文明の技術水準の全てを管理し、抑制するテクノス・タブーを施行し、人は空を進む事も許されず、高度なる技術へと接触する事を禁忌とされ、再び世界に大戦を起こさせない為に、管理運営されていた。
そんな世界に、砂漠で「何でも屋」として日々を過ごす、一人の少女がいた。
名前は火乃香。
彼女もまた第三の瞳・天宙眼を宿す新種族でもあったが、彼女の第三の眼は赤くなく、蒼き瞳を宿していた少女だった。
ザ・サード【完全版】のネタバレ・今後の展開
1990年代を代表する名作でもある富士見ファンタジア文庫から刊行された、作家・星野亮先生のSFファンタジーライトノベル作品です。
大きな戦争により、世界が砂漠化してしまい、破滅へと再び歩まない様にと、世界の文明と文化を管理する事が日常化された世界を舞台に、刀と気功術で戦う元気な美少女が主人公となる今作。
主人公の火乃香は、砂漠で「何でも屋」を営む、ザ・サードと同じ天宙眼を持ちますが、彼女の瞳は電脳ネットワークに接続ができる、ザ・サードの持つ天宙眼ではなく、突然変異の天宙眼でした。
紅き瞳が一般的なザ・サードと違い、火乃香は蒼き瞳を宿しています。
他のザ・サードとは違い、火乃香は電脳ネットワークへの接続は出来ませんが、気を集中させ、増幅する事が可能であり、第六感的な働きを可能とするなど、精神的な力と肉体的な力の両方を宿している特異的な存在でした。
でもそれゆえに人間でもなく、ザ・サードでもないと、孤独を感じ、誰とも深く関わらない様に生きてきました。
自身に宿した蒼き天宙眼の為に、ザ・サードとしての能力を疑われた過去を持つが故に、砂漠で生きていく彼女。
砂上戦車を生活の拠点にし、機械知性体のボギーと共に、何でも屋として日々を過ごして居た彼女ですが、ある日、火乃香は外宇宙からの知的生命体である異星人のイクスと出逢う事で、彼女の運命は大きく変わる事となります。
観察者と呼ばれる存在であり、星の中で息吹く、あらゆる生物、物体、事象、事件などの歴史と知識の全てを知る存在である彼との出会いが、火乃香の世界にどんな変革をもたらしていくのか、展開が気になる作品でもあります。
ザ・サード【完全版】の読んでみた感想・評価
1990年代のライトノベル作品の中で、SFファンタジー作品として挙げられる、今作品は、アニメ化などを果たしたほどに、連載していた1999年当時に話題を呼んでいた作品でした。
この作品が連載していた頃のラノベ界は、魔法とファンタジーの作品が大半を占め、その中で独特なSF世界観や設定で人気を博してしました。
砂漠と化した最終戦争後の世界で、新種族が新しく世界の支配者として君臨していく中で、どちらの存在でもないと、特異的な存在である彼女は、人々と関わる事で心を取り戻し、銃やレーザー兵器が主力として扱われている世界にも関わらず、刀と気功で戦い抜くと、SFアクションバトルを主軸においた作品でした。
また剣と魔法のファンタジーの世界とは違い、超科学ことオーバーテクノロジーが混在し、それが世界の破滅へと導くとの緊張感や、またそれを巡る人々の思惑など、その渦中へと巻き込まれてしまう火乃香など、冒険要素も深く取り込まれ、物語も面白く深い内容にまとめられています。
また登場人物なども個性的なメンバーが揃い、ヒロインにも関わらず、イケメンな美少女である火乃香に好意を寄せる男性陣は勿論の事、彼女の事が気になる女性陣なども、実に個性的に演出され、ドタバタコメディな要素もしっかりと盛り込まれています。
当時は富士見ファンタジア文庫作品として発表されましたが、作者である星野亮先生の都合により、一時休載となっていましたが、2015年より毎日新聞出版から再連載を開始し、イラストをSF作家の御大である、あの「攻殻機動隊」でお馴染みの士郎正宗先生を絵師として起用し、完成版として連載を再開した今作。
あの頃にこの物語を読んでいた人や、またあの頃のSFを知りたい人におススメできる内容です。
砂漠と機械に銃と刀の世界を堪能したい人におすすめSF作品
SFファンタジーのライトノベル作品を読む人や、砂漠と機械に銃と刀の世界を堪能したい人におススメしたいのが、このライトノベル作品です。
滅亡後の世界の砂漠を舞台として語られていく今作。
砂塵の蠢く世界へと崩壊し、かつて世界を崩壊へと、滅亡へと導いてしまった人類へのテクノロジーへの関与が、新種族に徹底管理され、人類とは違う種族が世界を治めると、深く作り込まれた設定など、SFの要素を盛り込み、ファンタジーの要素と掛け合わされた傑作のライトノベル作品とも言えるのが、この「ザ・サード」です。
当時の人気ライトノベル作品の主力は、主に魔法の世界を舞台とされ、SF設定の作品は衰退していたと言われていた時代でもありました。
その中で、魔法とファンタジーの要素と、SFの世界観の設定などを盛り込み、物語の細かな設定を創り、独特な世界観を生みだしたライトノベルでした。
SFファンタジーの中でも、リアルな描写に加え、最新科学兵器を相手に、サイボーグやアンドロイドと刀と気功で戦う等と、少し風変わりな、富士見文庫では珍しいジャンルとして有名でした。
当時の富士見文庫では、ファンタジーがありきなライトノベル作品が支流でしたが、その中でSF作品の設定を取り込み、難しい用語などをあえてファンタジーに組み直し、SFの難解さをライトノベルに直した走りともいえる今作。
一時は連載が中断し、展開が気になっていましたが、再開され、イラストを士郎正宗先生に変更し、新しく再出発し、今の時代にでも通用する内容は変わらずの面白さを読者に伝えてくれます。
あの頃のザ・サードを知る人や、これからのザ・サードを知りたい人におススメしたい、作品です。